≪衿≫ 衿元の作り方で自分らしさが表現できます。同じ着物でも衿で雰囲気や色合いが変わってくるものです。また、衿は着物姿で一番最初に目に付きやすいところです。そのためか、教訓的な意味の言葉が多いようです。
・衿を正す…姿勢や服装をきちんと直すこと。また、気持ちを引き締めて物事に取り掛かるという態度を示す。
・胸襟を開く…心中を隠さずに打ち明けること。すっかり打ち解けること。
・衿持…自分の能力を信じて抱く誇り、自負、プライド。
≪袖≫ 人間関係や感情を表現する言葉が多いようです。歌舞伎では、感情を表すために袖が多く使われます。
・袖の下…わいろ、心づけのこと。
・袖を絞る…涙にぬれた袖を絞る。
・袖を濡らす…涙などで袖を濡らす。涙を流して泣くこと。
・袖にすがる…あわれみを乞う。袖にとりつく。
・袖にする…ないがしろにする。おろそかにする。
・たもとを分かつ…今まで一緒だった人と関係を絶つ。人と別れる。
・袖を連ねる…大勢の人が連れ立ち並ぶ様をいう。
・無い袖は振れぬ…無いものは出したくても出しようが無い。力量が足りないのに何かをしようとしてもやりようが無いこと。
・袖枕…着ている着物の袖を枕にすること。
・袖から火事…小さな事から大事が引き起こされること。明暦の大火【振袖火事】(⇒
http://www.kimono-nadeshiko.net/htdoc/hanashi/tabi_histry.html ) からきているとされる。
・袖振り合うも他生[多生]の縁…どんな小さなこと、人とのちょっとした交渉もすべて深い宿縁によって起こるのだということ。「他生」は、この世以外の世、前世。「多生」は六道の間で何度も生まれ変わること、五百生。
茜さす紫野行き、標野行き、野森は見ずや君が袖振る(額田王万葉集)
≪帯≫ 帯は着物姿に重要な役割を持っています。『後ろの顔』とも言われ、うれしいや悲しいなどの感情を表現する存在でもあります。『むしろを着ていても帯は錦』といわれるほど、帯の合わせ方しだいで、着物は生きも死にもします。これだけ重要な帯ですが、帯にまつわる言葉は意外と少ないものです。
・帯に短し、たすきに流し…帯には短くて使えないし、たすきには長くて邪魔になる、物事が中途半端で結局何の役にも立たないことのたとえ。
≪裾≫ 裾に関連した言葉として『おひきずり』があります。おひきずりとは、着物の着方の一つで、おはしょりをせず、裾を引きずって着る着方のことを言います。現在では、芸者や花嫁姿くらいでしかおひきずりはみられなくなりました。裾を引きずっているところから、おしゃれにばかり気を使ってろくに仕事をしないこと、またそのような女の人、だらしない女の人に対しての呼び方として用いられます。
・裾を掻く…足元をなぎ払う。人を出し抜く。裏切る。
・裾さばき…着物の裾が乱れたり、絡んだりしないような足のこなし。
≪褄≫ 長着の裾の両端の部分を褄(褄先)といいます。
・褄を取る…裾の長い着物の褄を手で持ち上げて歩く。また、芸者が左褄を取って歩くことから、芸者になることを言う。
・つじつまが合わない…矛盾する、筋道がよくない。もとは裁縫用語で、ツジは縫い目が十文字に合うところを指し、ツマは着物の『褄』からきている。
≪その他≫ 着物を身に付けることによることわざもありました。
・故郷へ錦を飾る…錦の着物を着飾って故郷に戻ること。出世して胸を張って故郷に戻るということのたとえ。
・馬子にも衣装…誰でも立派な着物を着ればよく見えるということのたとえ。
・足駄をはいて首っ丈…足駄(あしだ)は、歯の高い高い下駄のことで、それを履いても沈んでいる様。あるいは、異性に惚れて夢中になっていることのたとえ。
・下手の長糸 上手の小糸…長い糸を針に通して縫うのは裁縫が下手な人で、上手な人は必要なだけの短い糸を針に通して要領よく縫うということ。